僕らの名もなき青い夏

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「なぁ……さっきの話だけど……上川さんから告られて断んの拓海くらいじゃね?」 「どうだろ……? 僕そんな恋愛興味ないし……」 「いま恋愛しなきゃ、俺らの高校生活、マジで野球だけじゃん……青春しないまま終わっちゃうじゃん」 「青春ねー。ってか、もう春じゃないし……アオナツかな?」 「あのな。論点すり替えんなよな!」 「あはは、バレた?」 綺麗な二重瞼をさらに大きくした拓海と一瞬、俺は目を合わすと直ぐに逸らした。 「ったく……」 「大体、僕ら高校三年生でしょ」 拓海の言いたい意味はよくわかる。 高校三年の夏が終われば皆、本格的にそれぞれの将来に向かって別々の道を歩み始める。長い人生と呼ばれる中で、この夏は一つの区切りとなるのだ。 大人と子供の境目の俺たちは、自分と将来に向き合って悩み、生まれて初めて自分で自身の未来にむかってひとつの『選択』しなければならない。 「葵は? 進路希望どうすんの?」 「俺はお前と違って自慢できるようなモノも脳みそも持ってないんだよな……勉強好きじゃないし、やりたいことって言ってもマジで野球以外ないし……でもプロ野球なんか無理じゃん。甲子園もでれてないしさー……そんなんで大学行くんなら働こうかなって」 「……確かに僕らのチームは公立だし、どっちかっていうと中の上くらいの実力だったから……当然甲子園は出場したこともない。でもさ……僕は葵と中学から六年間バッテリー組んで思ったけど、葵は野球センスあると思うよ」 「センスね……まぁ、ピッチャーだったし足も速いし四番だったしな」 「あははっ、ちゃんと自慢できるモノ持ってるじゃん」 俺はいつものように拓海にうまいこと話を誘導されたことに気づく。俺は恥ずかしくてそっぽを向いた。
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