僕らの名もなき青い夏

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「何? 僕にうまいことまとめられて不満? でもこれで葵が選択すべき候補が、ひとつみつかったでしょ」 「候補って……野球しに大学行けってことかよ?」 「そうだよ」 「あのな、簡単にいうなよ。大学の費用ってめちゃくちゃかかるし、俺まで大学行ったら、親の負担、目に見えてるしな……」 俺には二つ上の優秀な兄、(りょう)がいる。涼は獣医を目指して現在、一人暮らしをしながら地方の大学に通っている。そんな涼を全力でサポートするべく、専業主婦だった母は現在朝から晩まで弁当屋でパートとして働いている。 「拓海は? 歯医者継ぐのかよ?」 俺の言葉に拓海の顔が少し曇った。 拓海の父は歯科医で地元で歯科医院を経営しており、拓海は一人っ子だ。 「僕のことよりさ……葵の話しよ。葵はさ、たまには我慢せずに自分のやりたいようにしてもいいんじゃないかなって」 「え? なんだよそれ」 「うん、葵ってさ……すごく周りの目を気にするっていうか敏感に感じ取るっていうか……繊細じゃん」 「な、なんだよ。急に……」 拓海の真面目な顔に俺は心臓がどきんとした。 「……これでも葵とは物心ついた頃からずっと一緒だったから、なんだろな。友達とも家族とも違うけど……こう距離が近いっていうか、なんでもわかるっていうか……上手くいえないけど生まれたときから……ずっと一緒の葵のことは他の人よりわかるつもり」 俺が拓海と初めて出会ったのは生まれてすぐだったらしい。 俺の家と拓海の家は隣同士にある。俺たちの母親同士が幼馴染で大親友だったことから、結婚をして家を建てる際、隣同士になるように建てたと聞いたときは驚いた。 そんな環境で育った俺たちは、気づけばいつも一緒だった。 俺の隣には当たり前に拓海がいて、当たり前にこれからもずっと一緒に居られる気がしてた。
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