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菫の箱の中にはすみれの花の形のイヤリングが、桜の箱の中にはさくらの花の形のイヤリングが入っていた。
「可愛いー!」
そして、また二人で同じ言葉を発して、思わず笑ってしまった。花を形どったイヤリングの下にはパールが付いていて、それも全く一緒だった。
「えー?どこで買った?」
「駅前の……」
「あそこ?私、ほら、アパレルショップが軒を連ねてる通りの……」
一頻り、どこで買ったの話で盛り上がっていたら、くろがそろりと部屋に入ってきて、「みゃー」と鳴いた。菫に「お風呂に入りなよ。」と言いたげに。
「なんか嬉しい。菫ちゃんとこうやってシンクロできたこと。」
そう言って桜は立ち上がった。
「お父さんとお母さんの期待もあるし、ちょっと勉強してから寝るね。」
「うん。無理せずにね。」
出て行こうとする桜の後ろ姿に菫は「ねぇ」と呼びかけていた。
「うん?」
「私たち、やっぱり双子なんだね。」
「……もちろん。」
菫は桜を見送ってから、菫のベットを陣取って眠り始めたくろの頭を優しく撫でた。
双子にしか分からないことがある。
片一方に良いことがあると、それに合わせるように、自分にも良いことが訪れること。
片一方がどこかで傷付いていたら、自分は近くにいないのに、急に鈍い痛みを感じること。
片一方が熱を出したら、同じように熱を出すこと。
話さなくても阿吽の呼吸で通じ合えること。
子どもの時よりシンクロしなくなった自分たち。
シンクロしないことに不安になったこともあった。桜が見えなくて息苦しさを覚えたことも。
でも今は……
もう怖くない。
お互いが離れ離れになることも。
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