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家族との食事会は和やかな雰囲気で行われた。最初に菫と桜の父親の知り合いだと言う料理長兼店長が挨拶に来てくれた。二人に誕生日おめでとうと言ってから、父親と言葉を交わしていた。 「今日はコースメニューになっているからね。先に飲み物だけど、何か飲んだら?」 そう言って母親が菫と桜にドリンクのページを広げてくれた。菫は桜と相談してレモネードに決めた。両親はお勧めの白ワインをお願いしていた。 前菜のカプレーゼから始まり、ビシソワーズと焼きたてのパンが運ばれ、会話を弾ませながら食事会は進んで行った。 「菫は今日は部活に行ってたの?」 母の質問に菫は頷く。 「基礎練だけして帰ってきた。明日また朝練に行くから。」 「分かった。じゃあお弁当の用意を早めにするわね。」 「冷凍のおかずとかのある場所だけ教えてくれたら、あとは温めて自分で詰めるよ。」 菫のその返事に父親が目を丸くしていた。 「なんだ、菫、料理ができるようになったのか?」 父は出張が多い仕事であることと、菫も桜も高校生と言うことで、何でもかんでも話さなくなってきていると言うことで、二人の日常生活には疎いところがあった。 「ちょっとはね。そりゃ桜には及ばないけど。」 「彼氏にお弁当作るぐらいになってるわよ。」 母の一言に、父は食べていたパンを喉に詰まらせて咽せた。
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