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「お母さん!!」
菫が母を制すと母は無邪気に笑ってみせた。
「そりゃ、菫も高校生よ。彼氏の一人や二人いるわよ。」
「いやいや、二人いたらダメでしょ!」
思わず突っ込む菫だったが、突っ込むのはそこではないと我に返る。
「いや、なんか父さん、落ち込みそう。」
「なんで!?彼氏がいるなんて話、しょっちゅう桜から聞いてきたじゃん。」
「桜の時だっていつも落ち込んでいたよ。でも、菫がまだいたから気持ちを保っていられたと言うか。可愛い菫は変な男に捕まっていないなって。」
「……。」
てっきり父は自分は放っておいてもしっかりしているから大丈夫と思って、何も言わないのだと思っていたのに。
桜が可愛くて堪らないから、すごく心配していると。でも、本当はそうではなかったのだ。
「ちょっと待ってよ。」
それまで黙ってビシソワーズを飲んでいた桜が話に入ってくる。
「変な男ってなに?」
「いや、だって桜の付き合う男は母さんの話だといつも危なそうなやつが多くて……」
娘二人からの圧に父はしどろもどろになって返事をしている。
「まぁ、否定はしないけど。」
桜は自ら納得するように頷いて、再びビシソワーズに口をつけた。
その矢先、
「桜の彼氏もいい子よ。そして二人ともかなりのイケメン。」
と母が付け足すものだから、父は再びパンを喉に詰まらしかけた。
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