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四人で取り分けられるぐらいの量のメインの肉料理やパスタ、ピザが運ばれてきて、話に花を咲かせながら、それを十分に堪能して、後はデザートを待つだけとなった時だった。 「二人に私たちから誕生日プレゼント。」 母がそう切り出し、父が菫と桜、それぞれに袋に入った包みを差し出した。両手で受け取るとずしりとした重みがある。 菫は桜と一緒に包装紙を開けると、中から出てきたのは、菫は菫用の、桜は桜用の参考書だった。 「参考書!?」 「夢がなーい!!」 二人が唇を尖らせると、その反応は予想してましたと言いたげに母親は受け流している。 「今年は頑張る年でしょ。」 「父さんからはこれ。出張の時に学問の神社に行ってきてお守りを買ってきたぞ。」 朱色の布地に金色の文字で学業御守と書かれている。 「もう、お父さんまで!!」 最早、菫も桜も突っ込むしかなかった。そんな二人に母と父は穏やかに微笑した。 「合格したらまたここに美味しいご飯を食べにきましょうね。お祝いの。」 「父さんも母さんも出来ることはなんでもするからな。」 「……。」 菫は桜と顔を見合わせた。今度は二人とも文句を言うことはなかった。手の中でお守りをぎゅっと握りしめた。 「いい報告が出来るように頑張るね。」 「私も。」
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