優しい観客と記憶の恋音

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けど、それは表立ってのこと。 陰湿なことをする奴はどこの世界にもおって、たまに変な孤立をするときがあった。まあ私は自分でそれを打破してたけど、何や自分が削られとるなあと思うときも多かった。 そんなある日、生徒会室で仕事をしとると、軽いノック音の後に早馬先輩が入ってきた。 嬉しい気持ちは抑え、あくまでも現生徒会長として丁寧に挨拶をする。 『お疲れさまです。先輩の相手したいとこやけど、仕事溜まっとるんよ。コーヒーはご自由に。私は仕事してますから、用件は手短にお願いします』 すると先輩は、私の手元の資料を眺め、 『文化祭関連か。副会長以下はどうした』 と訊いてきた。そんとき、私は生徒会室に一人きりやった。 『各部に細かい予算の用途を確認しに行ってます。私はここで電話待機しながら資料作り。どうしても人手が足らんよってね、先輩も知っとるはずよ?』 途端、ぐりぐりっと頭を撫でられた。突然のことで驚いたけど、めっちゃ嬉しかった。 『麻美は抱え過ぎだ。引退した奴らも使えばいいだろう。まだ就任一ヶ月なんだから』 そう言われても、二年生が三年生をこき使うんは抵抗あるやろ。受験もあるし、うちの学校は特に難関校を目指すのが当たり前なんやから。 『じゃあ先輩が手伝ってくれるん? アカンやろ、超絶難関校受けるんやもん。ほんで大学はハーバード。ええねえ、人生プラン出来上がっとって』 ちょい意地悪したい気になって、頭に乗っかった手に自分の手を触れさした。冷たい温度を感じて、私は頬が(あこ)うなった。 『俺を使うのもいい。おまえが抱え過ぎないんならな。でもその前に一つ条件がある』 『⋯? 条件て?』 言うと、早馬先輩は私の手に逆側の手を乗せた。手のひらでサンドされる。一気に気持ちが高まって、ドッドッドッて心臓が胸の中を叩いた。 『あの⋯、先輩?』
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