優しい観客と記憶の恋音

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それ、私が持論にしとることと一緒やんか⋯。 ああ、何か今、すごく分かってもらえた気がした。感動の波が体中を駆け巡る。 『先輩』 『ん?』 ついに涙が零れ、私は想いを伝える。 『先輩が自分を信じられへんのやったら、私が先輩を信じてあげる。どんなに先輩が嘘ついても、どんなに自分を疑っても、私がいつでも信じてあげる。その代わりね』 ぼろぼろ溢れて止まらないモンはもう放っとこ。今は涙を拭うときやない。 『先輩が私のこと嫌いや言うても、それは信じへんからね。別れよ言うても、それも信じへん。だから告白は永遠モノや思うて、プロポーズ言うてまったて覚悟しとき。そんなつもりちゃうて言うても遅いからね』 私はサンドされた手にもう片方の手を添えて、椅子から立ち上がった。胸の前に四つの手のひら。決まった形にすれば、未来を示す四葉のクローバーになる四つや。 『麻美にとってプロポーズなら、俺はそれでいい』 先輩がくすっと笑う。 『おまえをカノジョにするんなら、別れることは許されない。俺が他の男に殺されてしまう。おまえが浮気するなら話は別だが、おまえがそんな女とも思えないしな』 挑戦的な言い方に、けっこうムカついた。 『私が浮気なんかするわけないやろ。先輩アホちゃうか。人を見る目がないねえ』 アハハッと先輩が笑う。 『いや、浮気なんか疑わないさ。ただ、待たせたかなと思ってな』 『待たせたって何?』 『告白。おまえ、待ってたろ』 何やの、やっぱり自信家やんか。 『ホンマにそう思うんなら、今すぐ抱きしめてよ。息ができないぐらい強く』 そう言って手を(ほど)くと、早馬先輩は私の体をぎゅっと抱いた。 心惹かれる匂い⋯大好きな匂い。 私たちは、この日から恋人同士になった。
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