優しい観客と記憶の恋音

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勉強で忙しいと思いきや、先輩はいつだって私の話を聞いてくれた。 電話で、会話アプリで、学校の帰り道でも。 いつキスしてくれるんかなって期待しながら、いつ身体を重ねるんかなってどきどきしながら、カレンダーは進んでいく。 少しも弱さを見せない早馬先輩が恋しゅうて、どんなときにも受け入れられるように気持ちを高めとった。 けど、あんまりにも奥手過ぎひん? 私はいつだってキスしてほしい思うとるのに。 そう言うと、先輩は照れ臭そうに言うた。 『実はな、言おう言おうと思ってたことがある。少し長い話になるから、どこかでゆっくり話そう』 『⋯?』 何や難しい顔しとる。私で話し相手になれるなら、何だって喜んで聞くつもりや。
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