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その言葉に目を逸らしながらコーヒーのカップを手に取ると、結愛は微笑んでこちらを向き、
「今日、日色くんにこんなこと話したのはね。キミなら、麗くんの人生を多少動かせるんじゃないかって思ったからだよ」
「オレ……が、ですか」
強かな眼差しで笑む結愛は「でも」と眉を上げ、
「応えるかどうかはキミ次第だよ。それにキミだって、麗くんのこと多少は気になってるでしょ? あたしと麗くんの関係気にしてたし」
「……だってどう考えても、いくらサークル内の先輩と後輩だったとはいえ、ここまで続いてるのは親しすぎるというか」
「ん〜……そーだねぇ」
顎に指を添えて、一瞬考える様子を見せる結愛。あっけらかんとした声で、
「ま、いわゆるセフレだったからねー、あたしと麗くん」
聞きながら飲みかけのコーヒーを吹き出した。ごっほごほと咳き込んでいれば、結愛は「なになになに」と声を上げ、
「びっくりしたぁ、そんなに驚く?」
「驚きますよ! ぜんっぜん普通じゃない! な〜にが『安心して』なんて」
「え〜だって当時大学生だよ? っていうかごめん、冗談」
「冗談でも悪質じゃん! 大学生イコール遊ぶってイメージも違うと思うし!」
「ごめんごめん。……にしても本当に麗くんのこと気にしてるのね」
ぐっ、と返事に困り沈黙を置いてしまう。
唇を結んだまま零したコーヒーをおしぼりで拭いていれば、結愛は紅茶を飲み干して、
「それでだけど。あたしこれから麗くんに会いに行く予定でさ。どうする?」
「どうするって?」
「あたしと一緒に来るかどうか。このタイミングで和解出来たら仕事で会うとき楽なんじゃないかな〜って思うんだけど、どう?」
「……道中、他の話も聞かせてもらえるなら」
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