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第二騎士団立て直し計画
今までの健康的な生活のお陰で、誰に起こされずともクラティナの目はぱちりと開いた。時刻は朝五時。風呂に入って身体を動かし朝ご飯を頂こう、そう考え見慣れない廊下を歩き大浴場へと向かう。そもそも女性がこの場にいる事を想定されていない造りなので、勿論風呂は男子女子と別れている訳もなく。幸いなことに誰も居なかったのでさっさと入ってしまおうと簡単に髪と身体を洗い湯船へ浸かる。
「ふぅ……」
一軒家の風呂も気持ちよかったが、やはりひらけた大浴場でしか感じえない風情もある。まあ徐々に慣れてしまうとは思うが、と一人呑気に鼻歌を奏でていたところ、突然入り口の方からこの場に相応しくないけたたましい音が響いて、クラティナは驚いて立ち上がる。
「___しっ、しつ、失礼しました……っっ!!」
バタバタと忙しい足音を立て扉をぴしゃりと閉めた後ろ姿は、恐らくアレンだ。恐らく、というのは何を隠そうクラティナの両の眼はつるりときらめく白い尻に吸い寄せられていたためである。
「___じょ、女性が……っ!何も隠さずあの様な…!そもそも浴場を使う時は……!!」
「あー分かった分かった。私が悪かったよ」
さっぱりとした心地で風呂から上がれば、待っていたのは顔を真っ赤にしたアレンのたどたどしい説教であった。憤慨しすぎてなのか何なのか分からないが、言いたい事が一向に纏まっていない。
「おっ、お、俺じゃなかったら!どうなっていたか……っ!」
おお、一人称が素に戻る程焦っているのか。
もう少し見てみたい気もしたが、これ以上責められ続けるのはごめんだ。クラティナはまだ少し濡れている髪を一括りに高い位置で纏め、アレンの肩を叩く。
「いくら騎士とはいえ私を襲うほど飢えてはいないだろう。ほら、アレンも早く入って来い。上がったら少し動いて食堂へ行こう」
アレンはまだ何か言いたそうだったが、それも無視して浴場を後にする。設備は皇宮預かりなだけあってまあ良いようだ。これなら生活に困ることも不便もあるまい。
「だっ…団長が入ったあとの…風呂…………………………?」
その小さな呟きも聞こえなかったフリをして、クラティナは中庭に出た。
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