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戻ってきた剣の女神
___パッと目を開けた時、違和感しか無かった。
見たことのない天井に他人の家の様な鼻につく甘ったるい匂い、知らない間取りの部屋、壁にかかった豪勢な服。__制服…いや、なんだこれは。まるで騎士が着るみたいな立派な…?
そこで嫌な予感が頭を過ぎったが、経験したことのある感覚に身体はその考えを肯定していた。
やっぱり、顔が違う。
小ぢんまりとした机に置かれた趣味の悪い鏡を手に取ると、数年付き合ってきた顔と全くの別人が映り込んでいた。目が合ったが、自分が瞬きすれば相手も瞬きする。しかし、見たことの無い顔ではなかった。寧ろ親交が深い…とでも言えばいいのか、流石に二回目ともなると案外落ち着いていられるものなのだと知る。
こうして私は桐沢美帆だった昨日までの日々を終え、クラティナ・フォン・バーナードの人生に戻ってきた。
学校もない、部活もない、愛してくれる家族も居ない、つまらない…ただ生きているから生きているだけの世界へ。
しかし、戻ってきた自分の周りの環境は、全くといって良いほど望んでおらず、理解し難い状況へと変わっていた。
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