ほろ苦い青春ラムネ

5/9
前へ
/9ページ
次へ
 恭介が突然、顔を覗き込むようにしてくる。 「てか、放課後毎日俺と一緒にいていいの? 彼女は?」  僕は背もたれに背中をくっつけた。 「別れた」 「また? 最短記録じゃね?」 「そうだね。一週間かな」  恭介の眉間にしわが寄る。 「一週間って。その間ずっと俺と一緒だったじゃん。もっと彼女に構ってやれよ」 「だって別に誘われなかったから。僕だって、向こうから連絡が来たら一緒に帰ってあげたり、買い物に付き合ってあげたりするよ? 何もしてこなかったのは向こうなのに、『全然構ってもらえなくて寂しかったです。私のことちっとも好きじゃないのが分かって悲しいです』って自分勝手すぎない?」  恭介が盛大なため息をついた。 「あーあ、俺とお前、何が違うんだろ」 「顔?」 「むかつく」  首を傾げると、恭介に肩を小突かれた。 「瑞生より俺の方が優しいのに。俺だったら、好きになってくれた女の子のこと、絶対に大切にするのに。そういう子が現れないから俺はこんなに悩んでるっていうのに!」  左右の拳で、こめかみをぐりぐりされる。鋭い痛みが頭全体に広がった。恭介の声がキンと響く。 「お前は誠実じゃない。告白されたから付き合って、別れようって言われたら別れて、それって何のために付き合うの? 恋愛ってそういうことじゃないだろ」  恭介がラムネを噛むガリっという音が聞こえた。 「帰る」  音を立てて恭介が立ち上がった。「またね」とは言えなかった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加