ほろ苦い青春ラムネ

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 翌朝、登校中に後ろから肩を抱かれる。 「ついにフッたんだって?」  恭介がニヤニヤしていた。 「なんでそんなに嬉しそうなんだよ」  僕は迷惑そうな顔を作って、恭介の手を引きはがした。 「瑞生、あることないことたくさん言われてるぞ。モテなくなるなぁ。やっと瑞生も俺の気持ちが分かってくれると思うと、浮かれちゃって」  背中を強い力ではたかれ、一瞬息が止まる。 「別にモテなくても困らないし、モテたっていいことないからいいよ」 「おうおう、連敗記録更新中の俺への嫌味ですか?」 「違うよ」  本当に好きな人に好かれなきゃ、意味ないんだよ。恭介も知ってるでしょう?  そう言うかわりに、まっすぐ目を見つめた。 「恭介はすごいなって思っただけ。何度フラれても、めげずに次の子にトライし続けてさ。僕だったら二人目くらいで心折れる」 「やっぱり嫌味だろ!」  伝わらない。でも、それでもいいか。僕と恭介は「親友」だって思われているなら、本望だ。自然と口角が上がる。恭介が眼前にピースサインを突きつけてきた。 「ということで、明日の放課後告白します」 「なにが『ということ』なのか分からない」 「瑞生がモテなくなった今がチャンスだろ!」 「恭介も懲りないね。帰ってきたら慰めてあげるよ」 「どうして玉砕決定なんだよ! 俺も彼女ほしい」  くだらない話をしながら学校に向かう。この日常が途切れなかったのは僕が告白を断ったおかげだ。やはり昨日の自分は正しかったのだ、とほっと息をついた。
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