371人が本棚に入れています
本棚に追加
23.夕焼けチャイム
茂みの中をいくら探しても見当たらない。
僕は人間の姿になり、昨日夜に通った道を、明るい昼間の時間にたどっている。
「諦めろよー、ゴミと間違えられて持ってかれちゃったんだってきっと」
狼狽しながら牧瀬家を出て行こうとした僕を心配して、同じく人間の姿になったレオンがついてきてくれている。
だけど、レオンは一応周りはきょろきょろ見渡すものの、小一時間探しても見つからないこの状況にすでに諦めムードのようだ。
「いいよ、レオンは帰りな。僕はもうちょっと探す」
昨日秋山に保護されたあたりの茂みを掻き分けながら、僕はレオンの方を見ずにそういった。ここを探すのは5度目だ。
「おまえな、昨日変な奴に連れてかれそうになったんだろ?また会ったらどうすんだよ」
レオンはため息混じりに僕の背中にそういった。振り返ると彼はズボンのポケットに親指を掛けて、まるで人間みたいにだらしなく立っている。
僕はツンと口を尖らせて、鼻から息を吐いた。
「別に平気、昨日はお酒飲んで、ちょっとふらふらしてたけら上手く立ち回れなかったけど、もう大丈夫」
ぶっきらぼうにそう告げると、また目の前の茂みに向き直って、植栽をガサガサと掻き分けた。
「ほーん、じゃ、俺帰るね」
背後でレオンの声がする。
僕はぐっと詰まりかけた喉を抑えた。数秒置いて、振り返る。レオンはまだそこにいた。
「帰っちゃうの?」
僕が尋ねると、レオンはまたため息をついた。
「夕焼けチャイムが鳴るまでな、鳴ったらラーメン食べ行こう」
「うん、わかった」
結局、チャイムが鳴って、日が暮れるまで粘ったけど、シューズはどこにも見つからなかった。
僕とレオンは、そのままお店でラーメンを食べて、とぼとぼと牧瀬家へと帰った。
最初のコメントを投稿しよう!