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6.門限破り
「さあさあ、聞いてやろうじゃねえか言い訳ってやつをよ!」
僕は人間の姿のまま玄関に正座させられ、その前を右に左に秋山が腰に手を当て行き来している。
2階に続く向こうの階段の踊り場からは、こっそりとこちらの様子を伺い顔を覗かせる他の三毛猫たちがいた。
「吉良くんと仲良くしてたら遅くなった」
僕が膝に手をつきそう言うと、秋山は眉をぴくりと揺らして立ち止まった。
「仲良くだ?こんなに酒臭くて、まさか酔っ払って猫だってバレちゃいねえだろうな?」
酒臭いのは服にこぼしたからだ。僕は間違えて口に入れたアレ以外は飲んでいない。
だけど「猫だとバレちゃいねえだろうな?」の問いに、僕の喉は微かにぐうと音を鳴らした。
『一応確認だけど……お前、ネコだよな?』
吉良くんの言葉が頭に浮かぶ。だけど、大丈夫だ。なんとか誤魔化せたはず。
「バレてない。だいじょぶ」
僕は強く頷いて見せた。
「本当だろうな?わかってるだろうが、もし無闇にバレたら危険なのはお前だけじゃない。他の猫たちも危ない目に遭うかもしれねんだからな?」
他の猫たちと言うところで、秋山はがばりと手を上げ背後の階段で覗き見している猫たちの方を指し示した。秋山の位置からは死角になって見えないはずなのに……猫たちは驚いてびくりと背中の毛を逆立てていた。
「わかってる。嘘ついてない」
うん、嘘はついてない。僕は言いながらもう一度強く頷いた。
秋山は一歩僕に詰め寄り上から顔を見下ろした。ずいと顔を近づけて、睨むように目を合わせた後、フンと鼻から息を吐いた。
「わかった、それは信じてやろう」
そう言ってまた一歩元の位置にもどっていく。
良かった許してもらえた。これで今夜はもう寝られる。と僕が胸を撫で下ろした時だった。
「ただし、門限破りは門限破りだ。お前には罰を与えるぞ」
「にゃんだって?!」
僕は声を上げて立ち上がる。
「この土日は外出禁止。そして一週間チューリュなしだ!」
「そ……そんな……」
僕は膝から崩れ落ちた。
階段の上から、見ていた三毛猫たちの声がする。
「秋山、厳しすぎるよ」
「そうだ、そうだ、チューリュなしはやりすぎだ」
「この人でなし!」
「短足!」
「おこりんぼ!」
「短足言ったやつ誰だ!出てこい!」
秋山が声を荒げると、三毛猫たちの声がぴたりとやんだ。
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