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結局、約5分遅れでバスの姿が現れたので、真知30分近く話し相手を務めることとなる。
ただ意外だったのは、別れ際、お婆さんは真知の手を両手で握りしめ、にこやかな顔で深々とお辞儀をしたことだ。そして、
「ありがとうね、助かりました。お喋りにも付き合ってくれて楽しかったわ」
そう言うと、ウォーキングバッグの中から、小箱を取り出して真知に手渡した。
それがなんであるか見当もつかない真知は、受け取った箱に掛かれている文字を読んでみる。すると、箱には”プロテイン X(ヒーローペプチドコラーゲン配合)”と書かれている。
「プロテインⅩって…」
真知が疑問を持つことを察してか、彼女がそう言いかけると同時に、お婆さんは小箱の説明を始めた。
「これは心ばかりのお礼よ。あなたに相応しいおくすりだと思うわ。ああ、でもおくすりと言っても、そうね~即効性のあるサプリメントみたいなものなのだから、心配はいらないわ。
肉体的な危機を回避するのには、とってもいいものなのよ。だから、その時が来てしまったら、これに頼るといいわ。
ただ、この中には20袋入っているんだけど、1袋だけ赤色の帯が付いたものがあるの。それだけは絶対に飲まない様にしてね、絶対よ」
そう言い残すと、お婆さんは、到着したバスに急いで乗って行ってしまう。
「あ、ありがとう、ございます…」
真知はバスに向かって頭を下げる。
余りに急なことで、”即効性のサプリメント”と言う説明に「それって薬だろ絶対に」と突っ込む間もなく、真知はそれを受け取ってしまったのである。
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