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駿はカップをまとめて取り、テーブルへ戻りながら話を続ける。
「ねえ、もしもだよ。見た目も中身も大輔サンと同じくらいカッコよくて、しかも越沼さんといる時にスマホしない相手が現れたらどうする?」
「そんなのいるわけ……」
「もしもの話だってば」
また向かい合って腰を下ろすと、駿はじっと見てくる。
「……だったら、もっと好きになるだろうけど」
拓也は答えざるを得なかった。
「じゃあ、大輔サンと別れたのは正解だったって事だ。もっと好きになる相手が現れても、付き合ってたら、その人を好きになるのはいけない事なんだから」
やや強引とも言える理論を展開され、ため息を吐きながら、テーブルのカップに手を伸ばした。
「……もしもの話でしょ。大輔さんより良い人が現れるのも」
「でも、大輔サンじゃないとダメ、とは言えなくなった」
同じようにカップに口をつけ、得意げに笑う駿。
「何その屁理屈……」
拓也は小さく言い返した。
サービスの内容をまだつかみかねているが、このように理詰めで対抗して、考え方を矯正させるプログラムなのだろうか。
しかし、『まるで友達のように』という謳い文句の通り、こんな時間に駆けつけ、誰にも言えず苦しんでいた悩みを受け止めてくれたのも確かだ。
目が合うと、駿は優しい笑みを投げかけてくる。
「彼のこと嫌いになる必要はないの。“好き”の反対は“嫌い”? それこそ、そんな単純な話じゃないでしょ」
「……好きの反対は、無関心だよ。相手に何にも思わないってこと」
スマホを操作する大輔の姿、そして、「もう興味が無くなった」という言葉が浮かぶ。
「越沼さんのゴールはそこにしよっか」
また重く沈みかけた気持ちをすくい上げるように、駿が提案した。
「え?」
「大輔サンへの興味をなくす。そうすれば、新しい恋も見つけられるでしょ?」
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