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失恋の特効薬
ある新薬の開発に、業界からの注目が集まっている。
〈チャイブ〉と名付けられたそれは、“任意の人物に関する自身の感情の記憶”を消す薬だ。
名前の通りセイヨウアサツキの花のようなピンク色のカプセル剤で、すでに商品化を見据えてか、キャッチーなハート型をしている。
特定のタンパク質に作用し、大脳辺縁系に働きかけ、相手の存在や出来事自体の記憶ではなく、その時に自身が感じた感情のみを、選択的かつ意図的に忘れる事ができるという。
「嫌いな相手に対して使えば人間関係が円滑になるという事ですか? PTSDなどの治療には有用ですか?」
その質問に、開発者の恋淵 英郎氏はこう語る。
「嫌いだと感じるのは何か自分に害を加える存在だからです。その信号を無視するのは危険ですよ。これはあくまで、失恋の特効薬です」
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