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――そして、高校最後の日。
桜が舞う校庭では、生徒が集まり写真を撮っていた。
教室では担任と泣きながら話す生徒、卒業証書に寄せ書きをする仲間達。別れを惜しみながら、ちらほらと帰っていく。
濃密な3年間を思い出し、俺は一行だけのメッセージを「これで本当に最後」と言い聞かせて、青砥へ送った。
「卒業おめでとう、元気でな」
しばらくしてメッセージが届いた。青砥からだ。
『卒業おめでとう。最後だから、言わせて欲しい』
俺はそのメッセージをドキドキしながら目で追いかけた。
『一年の時、僕に声をかけてくれて、ありがとう。本当に嬉しかった。一緒に出かけたことも大切な思い出だよ』
あの時の青砥の笑顔が蘇り、懐かしくなる。
もう一度見たかったなと残念な気持ちになった。
『きみと離れたことを後悔はしていない。あの時、きみまで除け者になりそうで怖かったんだ。僕は、きみがクラスで太陽のように笑う姿が好きだったから…。前にきみが仲良くしたいと言ってくれたメッセージに、僕は違うと答えたよね?』
――覚えている。あの時、俺とはもう友達じゃない、仲良くできないと言われたようでショックだった。
『僕はきみに恋をしていた。友達とは思えなかったんだよ』
――そうか。そういう意味だったのか。
今更ながら納得して、彼の本音に応えてやれない申し訳なさでいっぱいになった。
俺はまた一行だけメッセージを返した。
『ありがとう、ごめんな』
既読になって、メッセージが届いた。
『ありがとう、卒業おめでとう』
お互いメッセージはそこで途絶えた。
俺は自分でも分からない、たくさんの感情が入り混じって涙が一つ頬を流れた。
今きっとどこかで、青砥は俺よりもっと泣いている気がした。
――側にいられなくて、ごめんな。
俺は空を舞う桜の花びらに、青砥の幸せを願った――。
*☆終わり☆*
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