白鳥くんと羽ばたくヒナ

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白鳥くんと羽ばたくヒナ

「ねぇ、メイちゃん。それ、どうやって描いてるの?」 片目を瞑り、器用にアイラインを引いていく従姉妹のメイちゃんを私は隣りでまじまじと眺めていた。 「ん〜? ここから…目尻に向かって…こう、スッと。少しはみ出す感じで…ピンッて」 メイちゃんはもう片方の目を瞑り、お手本を見せてくれた。黒いラインが引かれたメイちゃんの目は、目尻が跳ね上がって猫のような吊り目になった。 「…すごいね」 私が息を吐くようにポツリと言うと、メイちゃんはニヤリと笑って私の両頬に軽く手を置いた。 「メイクに興味出てきた? 陽菜(ひな)もやってみる?」 私は急に恥ずかしくなって首を横に振った。 メイクなんて七五三の時以来したことがない。 高校生にもなって、休みの日でもメイクをしない私は少数派なのかもしれない。 「陽菜、可愛い顔立ちだからメイクしたら、もっと可愛くなれるよ」 メイちゃんは2個上の従姉妹で、たまにこうして家に泊まりに来てくれる。昔からメイちゃんは「頼りになるお姉ちゃん」という感じで憧れだった。 彼女は今、美容系の専門学校に通っている。 「私はメイクしても変わらないよ…きっと」 手鏡に映るのは、そばかすの浮き出た丸い顔…。 特に特徴もないパーツ達。周りにはよく「タヌキっぽい」と言われる。 「まぁ、陽菜はそのままでも可愛いけどさ。彼氏できたら、また気持ち変わるかもしれないね〜」 リップを塗りながら、メイちゃんは鏡越しに私と目が合うと猫目でウインクをしてきた。 私は唇を少し尖らせ、目を逸らす。 「…好きな人すら、いないもん」 不貞腐れる私の横で、メイちゃんのスマホが鳴った。 誰かからメッセージが届いたようだ。 確認したメイちゃんがチラッと私を見る。 「陽菜、ちょっとさ…人助けだと思って協力してくれない?」 「え? …何?」 私はキョトンとした表情のまま、メイちゃんの話を聞いた――。
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