白鳥くんと羽ばたくヒナ

3/5
前へ
/38ページ
次へ
場所を変えて、メイちゃんが一人暮らしするアパートでメイクすることになった。 アパートへ向かう途中、仲良さげな二人が気になりつつも、私は大人しくついて行った。 顔を洗い、化粧水をつける。 白鳥くんを目の前に緊張しながらも座ると、そっと私の頬を手のひらで軽く押した。 「うん、いいね」 肌の張り付き具合で保湿を確かめ、彼は手のひらで乳液をなじませると、私の背後に立ち、鏡を見ながら顔のマッサージを始めた。 メイちゃんは後ろの方でマネキン相手にヘアアレンジをしている。 男性にこんなに肌を撫でられる経験がない私は、顔が熱くなる。鏡越しに目も合わせられず、目を瞑るしかなかった。 座っていた椅子の角度を変えられると、彼が目の前に移動したのが感じられた。 化粧下地、ファンデーション…ポンポンとスポンジで塗り重ねられていく。 時々「目を開けて」「上を見て」と指示を受け、言われるがままに従った。目の前には真剣な表情の彼がいて、いつしか私も恥ずかしがることをやめた。 ブラシで頬や目の周りを撫でられると心地良さに眠くなる。唇に淡い色が塗られ、軽くティッシュで抑えると、次に彼の指が優しく唇に触れた。のせた色が優しくぼかされ、程よい輪郭になった。 白鳥くんが少し離れて私を見る。 「うん。…完成!」 嬉しそうな笑顔に私もつられて、はにかんだ。 椅子を戻し、鏡に私が映し出されると、そこには見たことのない美しい自分がいた。 タヌキ顔だった輪郭もマッサージのお陰か頬が細く見える。光沢を放つ肌、目は普段より開き、自然なグラデーションと輝きのアイメイクが施されていた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加