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「…かわいい! きれい!」
私は自分を見ているという意識もないくらいに、感激した。白鳥くんはメイちゃんからコテを受け取ると、私の髪を軽く整えてくれた。
「陽菜〜、可愛いよ~!」
目をキラキラさせて喜ぶメイちゃんに私も嬉しくなった。白鳥くんのしてくれたメイクは劇的に変わる、というよりは元のパーツを活かして輝かせてくれる、そんな魔法のようなメイクだった。
数枚写真を撮って、メイちゃんに見送られながら私と白鳥くんはアパートを出た。
「陽菜ちゃん、今日はありがとう。また今度お礼させてくれる?」
私より背の高い白鳥くんの隣りを、今は引け目に感じることなく歩けている。
「いいえ! こちらこそ、こんなに素敵にしてもらって…ありがとうございました! お礼するのは私の方ですよ」
ふふっと笑うと白鳥くんは、少し遠くの方を見るようにして歩いた。私はその柔らかな表情の彼に胸の内を明かしたくなった。
「私…こんなんだし、学校で下の方にいるんです」
驚いた顔で彼がこちらを見た。私はちらりと目を合わせ、すぐに目線を落とすと話を続けた。
「周りの子は…可愛くて明るくて自分に自信があって。私はどこか下に見られてる感覚があって…なので、何するにも自信が持てなかった」
白鳥くんは私に合わせるようにゆっくり隣りを歩いてくれている。顔を向けられているのが視界の片隅に感じられた。
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