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勝つのはどっちだ!? 風汰と陽太
「華先輩、早くしてよ〜」
「う、うるさいな! 話しかけるな、風汰! 今頑張ってるんだから〜!」
いつもの放課後、ゲームセンターのUFOキャッチャーで華先輩が「推し」のキャラクラーに狙いを定めている。さっきから商品には動きがない…あまりにも下手すぎる。
「華、貸して? 取ってあげる」
横から陽太が来て場所を変わると、すんなりとぬいぐるみが取り出し口に落ちた。
「陽太くん、さすが! ありがと〜!」
推しキャラに頬ずりして、華先輩は喜んだ。
俺の1つ上なのに、子どもっぽいところが昔から変わらない。
「風汰、お前こういうの得意なんだから取ってあげないと」
穏やかな口調で窘めるように陽太が言う。
陽太は俺の2つ上。俺達は家が近所で、小学生の頃から何かと3人で一緒にいることが多い。
きっかけは見た目の可愛さ故に、一部の女子から距離を置かれ、孤立しがちな華先輩の遊び相手として俺達が側にいる、そんな感じだった。
「風汰は得意じゃないよ、これー。風汰の指示通りにやっても全然取れないんだもん」
馬鹿にするようにコロコロと笑いながら、華先輩が俺を突く。
「はぁ!? 指示通りにできてないよ、華先輩は〜。下手すぎる!」
「はいはい、取れたから。ね? 帰ろうか」
いつもこんな感じで、すぐ口喧嘩になる俺と華先輩を宥めるのが陽太のポジションだ。
3人でいるのが楽しかったし、ずっとこの関係でいたいとも思っていた。
今も思ってはいるけど…俺は、華先輩が好きだ。
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