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帰り道、華先輩を家に送って、俺と陽太も隣同士それぞれの家に入ろうという時、陽太に呼び止められた。
「風汰…俺、華に告白しようと思う…いいか?」
「えっ…」
いつになく真面目な表情の陽太に俺は戸惑った。
陽太が華先輩を好きだろうという事は、態度からして分かっていた。逆に俺が好きな事も陽太は知っていたみたいだ。俺はどう答えていいか複雑な思いで、ただ俯いていた。
「じゃあ…風汰、俺と勝負しよう。同時に告白して、どちらが華と付き合えるか」
「そんな…本気?」
ふざけているのかと笑いたくなったが、俺の顔は引きつって上手く笑えない。
陽太はまっすぐ俺を見つめて頷いた。
***
陽太の提案で、今週の休みに陽太が華先輩をデートに誘って、来週が俺の番。そして再来週に告白をしようという話になった。
勝手すぎるやり方ではあるが…フェアなのかもしれない。華先輩は驚くだろうな…あの人、鈍感だから…。
***
今日は土曜日。陽太達、今頃デートしてるのかな…。
状況を知らない華先輩が俺にメッセージを送ってきた。
『今日、風汰来られないの? 水族館だよー?』
水族館か…陽太らしいな。女子が喜びそうな事をさらりとやってのけるから、アイツは他の女子生徒からも人気がある。きっと華先輩も一日楽しく過ごせるんだろうな…。
俺は始まる前から決着がついているような、この勝負を受けたことに後悔していた。
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