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箱の中身は…
有休消化で会社を休んだある日の午後。
いつも通勤時に通る河川敷で、何やら小学生の男子が騒いでいた。
その様子を横目に見ていると、小柄な一人の男の子が、仲間2人を従えた体格のいい男子に肩を思い切り突き飛ばされ、勢いよく尻もちをついた。
それを見て3人が笑い飛ばす。
――ったく…! いじめか?
よくよく見ると、倒された子は、朝に度々見かける男の子だった。いつもすれ違う人に元気よく挨拶をしている子だ。
一瞬、躊躇いながらも、俺は彼らのもとへ下りていった。
「おい、こら! お前達…」
声をかけると、蜘蛛の子を散らすように、いじめっ子達は逃げて行った。振り返り、残された男の子に手を伸ばした。
「大丈夫か? ケガ、してないか?」
立ち上がると彼は手足や服についた土を払って、涙目になりながらも礼儀正しくお辞儀をした。
「…偉かったな!」
俺の声にビクリと肩を揺らし、彼はゆっくりと顔を上げた。唇に力を入れ、必死に堪えているようだ。
「よく、泣かずに我慢したな」
俺が続けて言うと、堪えきれず彼はボロボロと涙を溢した。ただ、きれいな瞳は俺をまっすぐ見つめている。
ハンカチを取り出して「ほら」と手渡すと、また軽くお辞儀をして涙を拭いた。
顔と体についた土汚れや擦り傷を見るに、何度も倒され、殴られもしたのだろう。
膝小僧に、じんわりと血が滲み始めたのに気がついて、俺は彼を連れて近くのコンビニへ向かった。
トイレの水道でハンカチを濡らし、膝の汚れをとって、買ってきた絆創膏を傷口に貼った。
「お前、名前は? 俺は、浦島海斗」
「…竜田要」
さっきまでの泣き顔も収まり、少し笑顔を見せてくれた。要は小学4年生で、母親と二人暮らしだと話してくれた。
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