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魔女の呪い
朝5時、隣りで眠るきみに「起きないで」と願いつつ、そっと頬にキスをした。
ベッドを静かに抜け出して、シャワーを浴びる。
風呂の時間は手早く済ます。自分の身体は好きじゃない。見ていたくないから鏡も見ない。
ボクサーパンツとタンクトップに着替えると、少しは気が落ち着く。不要な胸の塊が消えてようやく、それっぽくなる。まだ湿っぽい体に黒のスウェットパンツとオーバーサイズの白Tシャツを着た。
部屋に戻るとベッドの中にいたお姫様がまだ眠そうな顔をして起き上がった。
読みかけの小説を開きながら歯磨きをする私の隣りに「姫」こと春花はくっついて座った。
彼女はいつも距離が近い。
「何読んでるの?」
「ん? 内緒」
「なんで〜」
くすくすと笑い、花のような笑顔を見せる。
私に絡んだ細く柔らかな春花の腕をそっと抜けて、洗面所へ移動した。
「春花、朝パンにする?」
春花は嬉しそうに「うん」と頷く。
キッチンに行き、パンに合いそうな食材を適当に調理する。昨日は二人ともお酒を呑んだから、量を軽めにしよう。
「昨日さぁ? みんなで恋バナしたの楽しかったね~」
ふわふわとした話し方をする春花が、コーヒーカップをテーブルに置き、ほんのり甘めのインスタントコーヒーを入れていく。
私以外の女子達が昨日は恋愛話に盛り上がっていた。
誰が付き合っただの、いつ結婚したいだの…。
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