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幼馴染みのかぐや姫
「なぁ〜、真琴。お前、本当にアメリカ行くの?」
高校の卒業式まであと少しという、ある日の放課後――。
俺は自転車を押しながら、前を歩く幼馴染みの神夜真琴に声をかけた。
「ん〜? 行くよ〜?」
真琴は軽く振り向き、また前を向く。
長い黒髪が左右に揺れるのを、俺はつい目で追ってしまう。
「…そっか」
真琴の両親は仕事の都合でアメリカにいる。
今まで祖父母と暮らしていたが、高校卒業を機にアメリカで生活することになったそうだ。
「寂しい?」
足を止め、俺を振り返る彼女の顔は、まるでいたずらっ子のようだった。
――寂しいに決まってる。
俺達、ずっと一緒だったじゃんか!
この先もこうして隣りにいられると思っていた。
「あー…、お前そう言えば、隣のクラスの御門から告白されたんだろ? 断ったってホント?」
「え? 何で知ってるの!?」
真琴に告白したのは、御門以外にも何人かいた。
卒業シーズンになると、みんな最後の賭けに出るんだ。例え、その賭けに負けても、それはそれでいい思い出になる。
「そりゃ、うちのかぐや姫は人気者だからなぁ〜」
「やめて、その呼び方〜」
真琴が俺の腕を軽く叩いた。迷惑そうに、でも照れた顔をする彼女が可愛かった。
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