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暑さがだいぶやわらいで、涼しい風を感じるようになった頃。
「なのか、端野のこと聞いたの?」
端野のことを知ってる友達から電話が来て、そう聞かれた。
「うん。結婚のことだよね?」
「びっくりだよー。急にSNSあげるんだもん。こないだあったっていってなかった?」
たぶん心配して電話してくれたんだろう。
唯一全部話している子だ。
「あの日のこと、こないだちゃんと話したよ」
「そ。よかったね。端野、変わってた?」
詳しいことは聞かない友達に感謝しつつ、相変わらずバカだったことを伝えて二人でくすくす笑った。
やり直したい。
戻りたい。
一体、何度そう考えて後悔したんだろう。
お互いに引きずって、いつもどこかで気にして。
あの日に、しがみついていた。
恋だったはずの想いが、いつのまにかなくなっていることすら気づかずに。
「あー恋したいな」
どれくらい恋してないのかなと思うと、目が遠くなる。
「合コンしたげるよ、今度」
「期待しとく」
私はそう返して、友達から送られてきた端野と知らない女の人のツーショットを見つめた。
そこには、私が知らない端野の幸せそうな笑顔があった。
願わくば、端野が幸せでありますように。
今は、心からそう思えるよ。
あの夏の花火大会は、もう心が痛まない私の大切な青春の1ページ。
fin.
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