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思い起こすたび、ずるずると脚から力が抜けていく。
「……結局、なんの手がかりも掴めませんでした。申し訳ありません司令……みんな……お姉ちゃん……」
消えてしまった仲間たちと司令官の行方は、ついぞ知れることはなかった。
一縷の望みをかけ、高校は桃柑女学園へと編入したが、そこにも特に不審な点はなく。
アンティークショップと同じ運命を辿る可能性のある、討伐率最下位、最低ランクの拠点の動向は常に把握し、気にかけてきた。
討伐戦にも積極的に参加してきた。
それでも。
結局、拠点消滅に関する手掛かりは、何ひとつ掴むことができなかったのである。
二日後、しずくは魔法少女ではなくなる。
ただの魔力持ちの一般人に戻って、手が届くような問題ではないと理解している。
だから──その日をずっと、〝区切り〟にすると決めていた。
「ねぇ、みんな……」
しずくは目を閉じる。瞼の裏、優しい笑顔の面々が続きを促した。
「私……みんなと引き換えに与えられたような力が、最初はあまり好きじゃなかったの。でも……それでも、魔法少女でいられて良かった。どこにも属さない身だったけど、今ではどの拠点の子たちもね、私を仲間だって言ってくれるの。……友達……もできたよ。リーダーの言ってた青春の謳歌は、ちょっとできてたかわからないけど……私なりに頑張ったの。──だからね」
心は、思いのほか凪いでいた。
空を見上げれば、春の一等星が輝いている。しずくの大好きな乙女座のスピカだ。
幾星霜の時を超え、正義の女神アストレアが今は静かにしずくを見下ろしている。
「最後は、私の好きなようにしようと思うの」
水鏡しずくには、叶えたい夢がある。
それは正義か、正しい行動かと問われれば、素直に頷くことはできないだろう。それでも──……
不意に、ポケットの中の依代が震えた。
依代は受信専用の通信具でもある。握ることで、発信者の声が魔力を介して直前脳内に聞こえる仕組みになっている。
また、出動要請だろうか。夜のヴィラン出現も珍しいことではない──
小さなアンティーク鏡を握ったしずくは、だが次の瞬間、目を見開いた。
──緊急伝達──
──対象:全魔法少女──
──明日ヒトヒトマルマルより大規模作戦を決行する──
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