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村を出て、山道を下る。
さあ、今日も木の実を拾いましょうねー。
……あら? 何かしら。道の真ん中に何か……。
やだ、うそ。
人が倒れていた。わたしは慌てて近づいた。
「大変! ちょっと、あなた大丈夫!?」
「う、うう……」
ああ、よかった。息はあるわね。それにしても酷い怪我。
見たところ、わたしとそう変わらない年齢のようね。っとそんな場合じゃないわ。とにかく村まで連れていかなくちゃ。
「お、リリィどうした、その娘」
村の入り口付近でパーカーさんが立っていた。
「道で倒れていたのよ。とりあえず家まで運ぶわ」
「お、そんなら俺んとこの宿使え。お前さん家、ベッドは一つだけだろ?」
「あら、ほんと? じゃあ遠慮なく」
そうして、彼女をパーカーさんの宿まで連れていった。
「ふう……、ありがとう。助かったわ」
「お礼はいいわ。それよりなんだってあんなところに倒れていたの?」
その女の子――エーシャといって、わたしと同じ16歳らしい――は、頭を押さえてふるふる首を振る。
「実は、踊りの訓練のために山に来たのはよかったけど、情けないことに足を滑らせてしまって」
踊りの訓練? 何、踊りって。山に来る必要があったんだろうか。でもまあ今はそんなことはいいか。
「まあ、そうだったの。大変だったわね。あなた町の人でしょ? 怪我がひどいから、しばらくこの村でゆっくりするといいわ」
するとエーシャは顔を明るくさせて笑顔で言った。
「まあ、助かるわ。ありがとう。あ、でもどうやら来るときにお金を落としてしまったみたいなの。宿代とか払えないわ……」
するとパーカーさんが明るい声でエーシャに言う。
「そんなのいいって。怪我が治るまで何日でも泊まっていけ」
「ええ、でも……」
「お言葉に甘えるといいわ。このパーカーさんは面倒見のいいだけが取り柄のおじさんだから」
「そりゃひでえ言いぐさだな、おい」
「あはは、ごめんごめん」
「あの、じゃあしばらくお世話になります」
ペコリとエーシャは頭を下げた。
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