2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふう……」
何て素敵な景色。それに、何て空気がおいしい場所なんだろう。町にはこんな澄んだところはなかったな。
村の空気を堪能していると、パーカーさんが声をかけてきた。
「お、外に出て大丈夫か? 足まだ治ってねえんだろ?」
「ああ、すみません。外の景色があまりにも綺麗だったもので、つい」
「ほお、この村の良さがわかるか」
パーカーさんはにっこり笑顔になった。今私がお世話になってる宿のオーナーさんだ。少し強面だけど面倒見がよくて親切なおじさんだ。
「私、小さい頃からこういう山の景色に憧れてたんです。町を出てみようと思ったこともあって。でも、両親が許してくれなくて」
「ほお、そりゃまたどういうわけで?」
私は言うべきか迷ったけど、このパーカーさんには何故だか正直に伝えようと思えた。
「……町から外れると野蛮な人が多いんですって。そんなの、偏見ですよね」
「ほお、そりゃひでえな」
ははっと屈託なく笑うパーカーさん。無理して笑ってるようには見えない。何も、思わないのかな。
「あの、すみません、失礼なこと……」
「ん? ああ、気にすんな気にすんな。まあ、しょうがねえよ。そういうとこでしか生活したことねえやつなら、何かしら思うところはあんだろ」
「でも……」
「それに、村の連中はみんなじゃねえだろうが、大体のやつは思ってるぜ」
「……何をですか」
「町なんざ、なよなよしてて情けねえやつの集まりだってな」
私は思わず吹き出してしまった。
「はは。な? お互いさまなんだよ。だから気にすんなよ」
「ふふ、はい……」
パーカーさんのおかげで、ますますこの村が好きだと感じた。
最初のコメントを投稿しよう!