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「ダメじゃ」
三人で村長のところに行ったけど、一言で却下された。
「やっぱりダメかあ」
「ちょっと酷いわ、村長。どうしてダメなの?」
村長が杖の持ち手をエーシャに向ける。
「こやつがよそ者だからじゃ」
「そんなこと、別にどうだっていいじゃない。減るもんでもないんだしさ」
わたしがそう言ったら、村長は頭から湯気を立てた。
「リリィ、お前にはこの村人の誇りというものがないのか!」
「べっつにー」
「むう……。嘆かわしいことじゃ……」
村長が杖を持ってうなだれる。
「相変わらず大げさなんだから」
「お前はもう少し村のことを考えるんじゃ」
「よく言うわよ。わたしにも踊り教えてくれなかったじゃない」
「それはお前があまりにも踊りを嫌がるからじゃ。あと、この踊りはちょっとやそっとのことで習得できるものではない」
村長はそう言ってエーシャに向き合う。
「お前さんはどうして踊りを教えてほしいんじゃ?」
「はい。私は、世界一の踊り子になることが夢で、この村にはとても素晴らしい踊りが伝わっていると聞いてそれを極めれば世界一の踊り子になれると……」
「……ふう。やはりお前さんに踊りを教えるわけにはいかん」
村長が諦めろというように突き放す。
「どうしてですか!」
「お前さんには気概が感じられん。世界一の踊り子? 目指すなら勝手に目指すがよい。しかしそんな者にこの村の伝統である踊りを教えるわけにはいかん」
「……っ」
エーシャが悔しそうな顔をしたのが分かった。
「用とやらはそれだけか? ワシは忙しいのじゃ。用が済んだならさっさと出ていくがよい。……ほら、さっさと出ていくんじゃ!」
エーシャはしばらくじっとしていたけど、村長に強く言われたものだから頭を下げて、家から出ていった。パーカーさんも慌ててついていった。
わたしは村長に向き直る。
「村長、何もあんな言い方しなくてもいいでしょ。彼女真剣だと思うわ。夢を語ってるときの彼女、とても楽しそうだったわ」
「楽しいだけでは務まらん。この村の伝統なんじゃ。そんじょそこらの踊りとはわけが違う」
「どう違うってのよ。たかだか踊りでしょ?」
「お前さんはまるでわかっとらん。村に伝わる踊りは、村に留まる覚悟を決めた者だけが踊る資格がある。それが、あの娘はなんじゃ。世界とな? そんな者にこの村の宝を渡すわけにはいかんよ」
「ああもう、さっぱり分かんない。わたしもう行くわ!」
「ふん! どこへなりとも行くがよいわ!」
わたしは分からず屋の村長の家のドアを乱暴に開けて、乱暴に閉めた。
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