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「やっぱダメだったな……」
「はい……」
わたしが宿に戻ると、二人がそんな会話をしていた。
「ただいまー」
二人が顔を上げてこっちを向いた。
「おう、リリィ、村長は何だって?」
「もう、知らない。あんな分からず屋の村長なんか」
「お前、また何か言ったろ。全くしょうがねえな」
わたしはカウンター横の椅子に腰かける。パーカーさんがグラスにジュースを注いでくれた。
……おいしい。
頭の中が少し冷静になったので、さっきの村長の言うことを、エーシャに伝えることにした。
「ふう……。ねえ、エーシャ。あなたはこの村に留まろうって思う?」
「え?」
「さっき村長が言ってたの。この村に伝わる踊りを踊る資格があるのは、この村に留まる覚悟のある者だけだって」
「……」
エーシャはわたしの言葉を聞いて下を向いて黙ってしまった。
わたしはパーカーさんに顔を向けた。
「パーカーさんは知ってたの?」
「ん? そりゃ知ってるよ。俺くらいの年代のもんはな。だから言ったろ。あんまり期待はするなって」
確かにさっきそんなこと言ってたな。エーシャは何か考え込んでるみたいだし。んー、何かいい方法は。あ、そうだ。
「ねえ、エーシャ」
「ん?」
エーシャが顔を上げる。元気がない。
「エーシャの踊り、見せてくれない?」
「え?」
「だって、村長はエーシャの踊りを見たことないでしょ。エーシャの踊りを見たら、もしかしたら考えが変わるかもよ。もう足も治ってるでしょ?」
わたしも見たことないけど、きっと素敵に踊るんだって、何となくそう思った。でもエーシャは首を横に振る。
「ダメよ、私の踊りは……」
「どうして?」
「きっと、村長さんから笑われちゃうもの。ますます教えてもらえなくなるわ……」
「そんなの、やってみなければ分からないわ!」
「でも……」
ああ、もう、じれったい!
「いいわ。それなら村長に見せるとかはいいから、わたしのために踊ってくれる? それならいいでしょ?」
「え……」
「わたし、エーシャの踊ってるところ見たい。エーシャは踊りが好きなんでしょ? わたし、エーシャが楽しそうに踊ってるの、見たいの! ねえ、お願い!」
エーシャの手を握って、一生懸命お願いした。わたしの必死さが伝わったのか、エーシャは戸惑った顔をしながらも、頷いてくれた。
「広いところがいいわよね。広場があるから一緒に行きましょう」
私はエーシャの手を握ったまま立ち上がらせると、エーシャは戸惑いながらも応えてくれた。
「よーし、それじゃ広場にレッツゴー!」
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