薬の対価

1/7
前へ
/7ページ
次へ
 俺は走った。  雨が容赦なく皮膚に打ちつける。視界が悪い。雨で見えないのか、涙で見えないのか、わからない。足がもつれ、ビチャンと音を立て水溜りに倒れ込む。口の中に泥水が入り、じゃりと土の味がした。  唇を噛む。転んでる場合じゃない。  ドロドロになった姿で立ち上がり、再び走った。膝を擦りむいたのか、曲げる度にズキンズキンと痛みを感じる。町の住人達はビシャビシャに汚れた俺を蔑んだ目で見ていた。  姉ちゃん、待ってろ。今、俺が薬を手に入れるから。  
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加