第3話 ことのなりゆき(間宮沙織)

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第3話 ことのなりゆき(間宮沙織)

与えられた装備:なし ****颯介 ゲームで命がけで逃亡中**** しかし、虎は早かった。 俺の後ろから、虎は猛然と本気の狩りを仕掛けてきていた。 うわっ! 泥水に落ちた。沼のようにぬかる。しまった。足を取られてうまく動けない。 その時だ。何かが頭上で大きな影を作った。 翼竜! プテラを召喚したら、来てくれた! 俺は翼竜に飛び乗り、手を伸ばして泥だらけの3人の子供たちを次々と翼竜の上に引き上げた。 悠然とサバンナの上空を遥か高く翼竜が飛び、太古の昔ではあり得なかったご対面が繰り広げられた。虎、チーター、キリン、ライオン、バッファローの群れの上空をゆっくりと翼竜が旋回した。 「プテラ、ありがとう!」 俺は、プテラノドンのおかげで命拾いしたことに、本当に感謝した。 ーこうしてゲーム参加中の颯介は、いつものように召喚したプテラに助けられて、無事に生き延びられた。ー ◇時は人間が生きる地球より数億年先の地球 忍歴2020年◇   「はあ、疲れた。」 「本当に人使いが荒いんだから・・・」 私は公衆銭湯の建物の陰で人の姿に戻った。 首を振った。腕も回す。 今日は泥水をかぶってしまったので、正直着替えたい。髪の毛に泥がついているし、服にも泥水をかぶったあとが残っている。顔にも泥がこびりついていた。屈辱的だ・・・。 ため息がでた。 本当に疲れる。ゲームからやっと解放されて、自分の生きる時代に戻ってきたのだ。 しかし、颯介ったら、本当にゲーム参加が増えてしまって、しょっちゅう呼び出されてしまって、私もへとへとだ。 私はプテラ。趣味ではじめた。 私は23歳の忍びだ。 けれども、颯介からの呼びだしが最近やたらと多く、一日の大半をプテラとして過ごすことが多くなってきている。このまえは、3日連続でプテラのままで、存在しつづけざるをえなかった。 正直きつい。いや、きついじゃすまないレベルだ。 プテラとは、プテラノドンだ。そうそう、太古のむかしに消滅したといわれるあの恐竜一味(きょうりゅういちみ)の飛べるほうだ。 颯介が略して「プテラ、プテラ。」と私のことを面白がっていうので、最近は、私は趣味の変身した姿を自分でもプテラと呼びはじめた。コスプレの中でも、プテラ装だ。 私の忍びとしての得意技は、人をあやつる術だ。それから、なりきる術と火術(かじゅつ)と逃げのびる術も得意だ。人をあやつる術以外の得意技を使って、趣味でプテラをやっている。 好物は人をあやつる術力を高めてくれるマンゴリランとアヤツリンゴだ。それらのくだものは、ちょっと高いデパ地下で売っている。 颯介に初めて出会ったのは、偶然だった。 その日は半ドンで、はやく仕事が終わったので、職場の帰りにデパ地下でマンゴリランとアヤツリンゴと日本酒を買って帰る途中だった。私の気分はウキウキだった。 私は偶然、趣味のプテラになりきったところで、颯介につかまった。その場の勢いで、買ったばかりのマンゴリランとアヤツリンゴと日本酒を投げだして、颯介と龍者(りゅうじゃ)の実の()()()()()()に興じてしまった。初めての経験だったが、人を乗せて飛行するのは、すこぶる楽しかった。 それからというもの、人をあやつる術だけはまだ発揮していないが、逃げのびる術と火術となりきる術はフル総動員で発揮して、ゲーム召喚中にプテラとしてすごす毎日だ。仕事にそろそろ支障がでそうだ。 もう、趣味のプテラ疲れを癒すために、今年の有給は使いはたしてしまった。 この前なんて、颯介に呼び出されて大人4人ものせて、ひたすら飛んだ。正直、重すぎた。重すぎて、腰にきた。 23歳はそんなに歳でもないが、4人ものせて飛べるほど力強くもない。 4人をのせて飛行するなんて、趣味の領域をこえているといわざるをえない。
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