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第5話 偶然の密会(沙織)
◇◆ サバンナ ゲーム召喚中・サバンナキャンプ クリア率0.002%
与えられた装備:テント
カメラアプリミッション:松明草を認識させよ
クリア条件:解放される条件は、食べ物ゲットと、カメラアプリミッションクリアの二つを満たし、解放の呪文をとなること。
「いつかはやりかねない。そう思ってたけど。」
五右衛門さんは、秘密の言葉でしゃべった。私たちの中では初等学校前の寺子屋時代から使いなれた言葉だ。しかし、数億年前の地球人の人間には、私たちプテラノドンが何かうめいているぐらいにしか聞こえないだろう。
「鷹ホーのマンゴリラン3つと、シュッケーの帝杯の天井席。」
五右衛門さんは完璧なプテラノドンのコスプレ姿で、即座に交渉のカードをきってきた。
「御意。」
私には文句などうていない。
プテラ装のひとときのお楽しみのはずが、ばけた姿のままで職場の仲間に遭遇した。それは穴があったら入りたい羞恥心にあふれるシチュエーションだ。
さらに、お堅い職場の先輩までもプテラ装をしているのを目撃してしまった。どう処理したらよいのか分からない感情にあふれるなかでのことだった。
まるで、何も身につけていない丸裸の姿を見られるようなものだ。恥ずかしすぎる。
ゲーム上は一刻を争う緊迫したシーンだ。私たちは幼い頃からの徹底した訓練の賜物である忍びとしての処理能力の高さを、何か妙なことに使ってしまっていた。
「今は禄欠だから、月中の俸禄が出たら渡す。それでいいか?」
五右衛門さんはナディアの頭上に移動しつつ、すごいスピードで秘密の言葉で話した。
「御意。」
コスプレには禄がかかるのだ。積みたて禄には手を出さずに、小遣いの範囲でまかなうには、苦労する。
勘定方とはいえ、事情は察する。私に文句はない。
鷹ホーとは、奉行所近くの高級デーパートの略だ。
私が颯介に初めて出あった日にデパ地下でマンゴリランとアヤツリンゴと日本酒を買ったのも同じ所だ。最高のマンゴリランが手にはいる。禄が出た日の帰りは、たいてい奮発して鷹ホーに立ちよるのが私のルーティンだ。
シュッケーとは、ある世界からの輸入版競技だ。地上では竹馬に乗った忍びが、姫路スタイルの城の陣地を互いに守って縦横無尽に走りまわり、玉を取りあう競技だ。この地球では、現在大人気競技だ。その天井席はプレミア価格でなかなか手がでない。
「鷹ホーのマンゴリラン3つと、シュッケーの帝杯の天井席。」
これは完全に御意。
さらに追加された。
「奉行所に限らず、誰一人にもらしてはならぬ秘密だ。」
五右衛門さんはナディアたちを背中にのせながら、秘密の言葉で叫んできた。
「御意!」
私も秘密の言葉で叫び返す。
「腰やられるから、気をつけて。重いわよ!」
私は必死でアドバイスを送った。秘密の言葉だ。
「御意!」
五右衛門さんから言葉が返ってきた。
「沙織さん、逃げのびる術が俺は不得手で、実は留年しそうだったんだ。フォローしてくれるか。」
「私に聞き耳をたてる術を使うのはやめるならばね。」
私たちはそう言いながら、よろよろと飛びはじめた。
ゲーム参加者であるナディアの旦那のジャックの頭上に現れたプテラノドンは、51歳のおじさん忍びだった。この道何十年のプロフェッショナルだ。
おじさんと私たちは完全に初対面だったが、ナディアたちがゲームのミッションをクリアできるように、無に徹して働いた。
このゲーム、ある意味、噂のゲームなのだ。
数億年前の地球にワープできるように設計できている。私たち忍びが参加できるのは、なりきる術で、プテラノドンになるしかないと思うが、でも、禁断の参加方法であることはまちがいないと思う。
私がやってしまったのはまちがいなさそうだ。
コスプレネットワークで座標軸を伝えた時点で、私は何かやらかしている気がしてならなかった。
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