第1話 手打ち

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第1話 手打ち

手打(てう)ちにする。」  私はそう帝に言われるのではと(おそ)れて、目をつぶった。  なぜもっと早く真実を告げぬのか。  そう叱責(しっせき)されると思った。  帝の手が私の首のあたりに近づく気配を感じた。  そう、(ころ)される。  帝の手のひらが、私のほほを包んだ。  片手で私の(ほほ)を包み、もう片方の手できっと短剣(たんけん)を振りかざしている。私はそう想像した。  目をつぶったまま、涙を流してじっと身動きをしなかった。  私は恋した人に(ころ)されるのだ。 「沙織!」 「はい。」  私は涙が流れ続けるまま目をつぶっていた。  身体中が熱い。(せつ)ない。  心が焼けるように痛い。 ◇◇◇ ◇◇◇ なぜ、こんなことになったかというと、元はといえば、私の趣味のコスプレが原因でございます。 話は数週間前にさかのぼります。
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