酷く正しい不自然な死

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「ねぇ……麻由……あの二人……どうして死んじゃったんだろうね……」  隣で手を合わせていた莉子も緩やかに流れる,水の存在すら感じさせない透明度の高い清らかな川を見て不思議そうに呟いた。 「どうしてだろうね……たぶんだけど,連れて行かれちゃったんじゃない?」 「え……? 誰に……? っていうか,なにそれ……急にめっちゃ怖いんだけど……」  傾いた陽射しが茂みの影を濃くし,長く伸ばした真っ黒な影が音のない川の中へと沈んでいった。 「私ね……野村とは小学校が一緒だったし,何回かバレンタインでチョコもあげたんだ……」 「うん……知ってる。でも,チョコのことは初めて聞いた……」  生い茂る草が風に揺られると,青臭い臭いが辺り一面を息苦しく覆い,臭いに混ざって虫たちの存在が近くにいることを感じさせた。 シリシリシリシリシリシリシリシリ……シリシリシリシリシリシリシリシリ…… 「子どもの頃は野村を独占したいって夢をみることもあったの……でもね同じ教室にいるのに野村は私のことを全然見てなかったの……私がそこにいることすら気づいていなかったかも。だから私は毎日毎日野村のことを見てた……どれだけ見ても気づいてもらえなかったけど……なんで気づいてくれないのか,なんでかわからなくて……」  早口になる麻由を横目に莉子はどう応えてよいのかわからず,黙ったまま河原を見ていた。 「私はずっとずっと野村を見ていたし野村だって私の気持ちに気づいていたはずなのに,でも一度も私の名前を呼んでくれたこともないしチョコだって何年も渡してたのにお礼の一言もなかったし,私はあんなにあからさまに好意を見せてたのに野村はなにも言ってくれなくて私がなにをしてもなにも反応してくれなくて」  血走った目をきつく閉じ,はっはっと声に出して大きく深呼吸をしてからハンカチで口もとを拭くと,莉子を見てゆっくりと笑顔をつくった。 「ごめんね莉子。私……いま怖かったでしょ?」  莉子は静かに首を横に振り,麻由と視線が合わないように怯えながら再び河原を見た。 「莉子,ごめんって……もう大丈夫だから。私,ちっちゃい頃から興奮すると早口になっちゃうの。でももう大丈夫だから。私,もう野村が私を無視するとか心配してないし,なんならこれでよかったと思ってるから……」 「え……? 麻由,急になに言ってんの?」  真っ黒い影がゆっくりと水面から起き上がり,茂みの奥で(うごめ)いた。 シリシリシリシリシリシリシリシリ……シリシリシリシリシリシリシリシリ……
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