三話 自己紹介

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 私は、さっき買ってきたコンビニの袋からペットボトルのお茶を取り出して彼の前に置いてあげた。 「どーぞ、飲んで。あっ、その前に名前教えて貰っていい?」 「すみません。名前も名乗っていませんでした。政本幸知(まさもとゆきと)っていいます」 「私の名前は、藤堂咲(とうどうさき)だよ。ふじに食堂とかのどう。さきは、花が咲くのさきだよ」 「さっき、社員証でちらっと見ました。俺は、政治のせいに本。幸福のこうに知識のちです」 「へー幸福のこうに知識のち。しあわせをしるって書くのか。めっちゃ格好良い名前だね」 「はぁー恰好よくなんかないですよ……。大げさ好きて恥ずかしい……」  幸知は、頭を抱えて俯いてしまう。恥ずかしいか? めちゃくちゃ恰好いいが。でも、だから遠回りするような漢字の教え方なんだ。笑っちゃいけないけど、笑っちゃう。 「ふふふ」 「ほらっ、やっぱり笑ってる」  幸知がちょっと怒っている。さっきよりも少し緊張が解けてきたのか良い傾向だ。 「違うよ。名前に笑ったんじゃなくて、隠そうとする幸知くんが面白かったんだよ。良い名前じゃん。人生をかけて幸せを知って欲しいってご両親の想いだね。かっこよ」 「そんなんじゃないですよ……」  恥ずかしいのか、ちょっと照れている。 「それより、どれくらいあそこにいたの? お腹空いたでしょ? ご飯にしよ。もう今日は作る気がなくてコンビニでごめんね」  私は、ガサゴソと袋から買って来たお惣菜やらおにぎりを出す。 「多分、五時間くらいです……」  幸知がボソッと口にする。 「五時間? 全く、何がどうしてそうなったの?」  私は、何を食べようかなと思いながらテーブルに出した物を見ながら訊ねる。 「話すと長くなるんですが……。すみません、遠慮なく頂きます」  幸知は、目の前に置いてあげたペットボトルに手を伸ばした。蓋を開けてゴクゴクと勢いよく飲んでいる。そうとう喉が渇いていたらしい。  そして、静かに話し出した。
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