一話 雨の中の出会い

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 ゆっくりと船が私の近くまで寄ってくれる。ある程度来たところで止まってくれたので、船の後ろにある海から上がれる部分まで泳いで行った。 「お疲れ様ー」  一緒に来ている湊さんが出迎えてくれた。手を差し出してくれたので、私はその手に捕まった。 「引き上げるよ」  強い力で船に引き上げられる。私は船に引き上げられた瞬間、重力を感じて床に倒れ込んだ。体が重すぎて立ち上がれない……。 「大丈夫? 咲ちゃん? 疲れちゃったんでしょ?」  湊さんは、ニコニコ笑って私の顔を覗き込む。 「すみません。体が重すぎて立ち上がれない……」 「あはは。だって、咲ちゃん何回も挑戦してたもんねー」 「でも、全然立てなかったです」  私は、しょげて落ち込んだ。 「コツさえ掴めば早いんだけどね。休憩したら、また挑戦したらいいよ」  湊さんが、優しく励ましてくれる。 「次は、誰がやるー?」  複数人が手を挙げたのか、ボートのデッキではじゃんけんをする声がした。私は、重い体を無理やり動かして足に付けていたボードを外した。  今日は、飲み会で知り合った人たちに誘われて湘南の海に来ている。マリンスポーツなんて初めてで、結構楽しみにしていた。  初めてやったウェイクボードだったけれど、とても楽しい。これで、上手に海の上を滑ることができたらもっと楽しかっただろうな……。  目の前に広がる海を見て、名残惜しさを隠せない。  だけどその日は、久しぶりに休日を満喫できて大満足だった。
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