一話 雨の中の出会い

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 キリが良い所まで終わって時計を見ると、コンビニから帰って来てから一時間半が経過している。21時をちょっと過ぎた辺りだった。  いつもならあと少しやって行くが、今日は帰ろうとパソコンの電源を落とす。  自分のディスクの横にかけていたカバンを取って立ち上がる。隣を見ると、鈴木さんもまだ仕事をしていた。 「お先に失礼しまーす」  周りで働いていた同僚に聞こえるように、ちょっと大きめに声を出す。 「「「お疲れ様ー」」」  何人かから返事が返ってくる。その返事を聞いた私は、オフィスを後にした。会社の廊下を歩きながら、雨は大丈夫だろうか? と心配になる。  自分の机が窓際にある訳じゃないから、外の天気がわからないのだ。  会社を出ると、残念ながら雨が降っていた。しかも結構振っている。さっきよりも風が強くなったようで、屋根のある出入口から一歩出るときっと服の色が変わるくらい濡れてしまう。  私はちょっと考えて、コンビニに寄って行くことにした。こんなことなら、さっきついでに買っておけばよかったと後悔しながら一歩足を踏み出す。  右手をおでこに当てて、顔が濡れないようにガードした。  人にぶつからないようにコンビニまで走る。すると、さっきと同じ路地に座り込んでいる男の子がいた。  ギターが相当大切なのか、自分よりもギターが濡れないように着ていたTシャツで守っていた。私は、その横を素通りしてコンビニまで走る。  突然降り出した雨だったから、売り切れていないか心配だったが透明のビニール傘がまだ残っていた。良かったとホッとしながらお会計を済ませる。  コンビニを出た私は、今度は走ることなくゆっくりと駅に向かう。駅に向かうためには、もう一度会社の前を通り過ぎないといけない。だから、またさっきの男の子の横を通った。  横目で見た彼は、自分がびしょびしょになるのも構わずに動く気配がない。ゆっくりと通り過ぎたのだけれど、どうしても気になっている私がいる。  いつもなら、絶対に気にも留めない私なのに……。自分から進んで、厄介事に頭を突っ込む性格ではないのも自覚している。だけど、どうしても足が止まってしまう。 「はぁー。仕方ない……」  私は、諦めて彼がいる路地に戻る。男の子が座り込んでいた頭上に、傘を差してあげた。 「こんなところでどうしたの?」  そう声をかけると、その子は、え? っと驚いた顔をして私を見上げた。
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