二話 男の子を拾う

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 駅の入口まで着くと、傘を畳んで私が持った。彼と一緒に、改札へと歩いて行く。ここに来るまでの道のりや、改札への道に迷いがないのでこの駅のことは知っているのだろう。  私の会社の最寄り駅は、横浜にある関内という駅。市営地下鉄を使って通っていて、自宅は弘明寺(ぐみょうじ)という駅にある。関内から電車で10分くらい。  二人とも無言で改札へと歩いていたのだが、改札に近づいたところで彼の足が止まる。私は、そのまま持っていたPASMOで改札を通ろうとしていたのでどうしたのかな? と後ろを振り返った。 「あの……。重ね重ね申し訳ないんですが、お金もスマホも持ってなくて……」  彼は、自分の不甲斐なさに消えてしまいたいと思っているのかかなり落ち込んでいる。私の方も、気づかずに普通に改札を通り過ぎようとしていて悪かったと反省する。 「そっか。そうだよね、ごめんごめん。切符買ってくるからちょっと待っててね」  私は、切符売り場へと足を向ける。弘明寺駅までの料金を確認して切符を買った。PASMOを持ち歩いているから切符を買うのは久しぶりだ。 「はい、切符。うち、弘明寺って駅なんだ。知ってる?」  私は、彼に切符を渡して顔を見る。切符を見る目が、申し訳なさそうにしている。真面目な子だなー。これくらい若い子なら、ラッキーって思うものじゃないのかな。  それは、私が若者を馬鹿にし過ぎか……。 「降りたことはないけど知ってます。あの、本当にありがとうございます」  彼が、きちんと頭を下げてお礼を言った。 「いいよー。私が勝手に声かけたんだから。気にしないで」  じゃあ、行こうと私は改札へと足を進める。すると彼も、私の後を着いてきてくれた。駅の入口に着いたときに、ちょっとは服を絞ったりしたのだが……それでもやはりびしょびしょなのには変わりない。  電車の中は、冷房が効いているから寒くないかなと心配になる。  駅のホームに着くと、丁度電車が来るところだった。時間が遅いので、そこまで人はいないが、これから帰宅するのだろうサラリーマンがちらほらいる。  私は、人がまばらな前の方に向かった。  歩いていると、横を電車が通過していく。電車がきちゃったからここら辺で良いかと足を止めて、電車のドアが開くのを待った。  私の隣には、背の高い彼がいる。そう言えば、まだ名前も聞いてないなと彼の顔を見て思った。
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