二十七話 デート①

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 連れてこられたプラネタリウムは、話では聞いていたけれどとても目を引く建物だった。できたばかりの施設なのだが、外観は近未来を思わせる。  銀色の球体がシンボルとなり、入り口となる大きな階段には足元を照らすライトが光り宇宙船にでも乗り込むようだった。  中に入ると、高級感あふれる室内に目を見張る。自然の中で綺麗な星空を見るがコンセプトに作られただけあって、観葉植物があちこちに置かれ耳を澄ませると森の中にいるような音が聞こえる。  小鳥のさえずりだったり、川が流れる音だったり、徹底した世界観作りに私はワクワクが隠せない。 「ねえ、幸知くん。私初めて来たんだけど凄いね。今週忙しくて、どんなところなのかチェックせずに来ちゃったんだけど……。かえってその方が良かったかも」  私は、室内をきょろきょろ見回しながら笑顔が零れる。 「咲さんに喜んでもらえて良かった。俺も初めてで、凄く楽しみだったんです。咲さんと初めを共有できて嬉しいです。それに、びっくりするのはこれからですよ」  幸知は、なにやら含んだ笑いを浮かべる。何かあるのかな? と思ったけれど、私はもう施設の雰囲気に心躍り、早くプラネタリウムを見てみたいと童心に帰ったようにワクワクが止まらなかった。  チケットの販売ブースを見つけたので、私はそちらに向かおうとした。すると、幸知が腕を引いて止まらせた。 「チケット買わないの?」  私は、疑問に思って彼の顔を伺う。 「実は、前もって予約しておいたんです。チケットはオンラインなので、スマホ見せればいいだけです」 「えっ? そうなの? 予約までさせちゃってごめんね。料金いくらだった? お金払うよ」 「俺が誘ったから、チケット代は気にしないで下さい」 「そんな訳にいかないよ。結構高いでしょ?」  その後も払う払わないで押し問答したけれど、幸知に押し切られてしまった。社会人にもなってない子に奢られるのは、良心が痛む。  でも、それを言ったら幸知も面白くないと思うから言えない。 (仕方ない。今度、何かで埋め合わせしよう……)  私たちは、上映時間まで少し時間があったのでお土産屋さんを見ながら時間をつぶした。
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