二十八話 デート②

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二十八話 デート②

 プラネタリウムの上演時間が近づき、私たちはホールの入り口へと向かった。開園を待つお客さんが、入り口前に列を作っていたのでその最後尾に私たちも並ぶ。  しばらく待つと開園時間となり、ホールの入り口が開かれ順番にお客さんたちが中に入っていく。  並んでいた列が消化され、私たちも順番に中に入る。中に入った瞬間、小さな声で「うわぁ」と感嘆の声を漏らす。  思っていたよりも中は広く、映画館のように座席が並べられている。天井は、一面がスクリーンになっていてどんな映像が映し出されるのか期待が募る。  ホールの最前列は、大きな空間ができていてそこには四つだけ丸い大きなソファーが置かれいた。大人二人がゴロンと横になれるくらい大きなものだった。  幸知は、スマホの画面を見ながら座席番号を確認していた。私は、どこら辺の席なのかなーと黙って幸知に着いていく。  すると、どんどん前の方へと進み幸知は丸い大きなソファーの前で止まった。 「咲さん、席ここです」  幸知が指し示したのは、四つ置かれた丸いソファーの右から二番目だった。 「え? ここ? ってか、これ席なの?」  私は、びっくりして目を見開く。席と幸知の顔を交互に見て、戸惑いを露わにする。 「横になって見る席なんです。予約必須のプレミアムシートです」  そう言って、宇宙を模したような深い紺色に星が散りばめられているソファーに腰を下ろした。  丸いソファーは、座り心地を最大限追及したようで、手触りの良さそうなクッションも置かれている。 「はい、咲さんもどうぞ」  そう言って、幸知は自分の隣のスペースをポンポンと叩く。私は、中々動くことができない。だって、いくら大きいソファーと言っても、私が隣に座ったら幸知と半身を密着せざるを得ない。  普通の座席だったらくっつく必要ないよね? これ、完全にカップルシートでしょうよ……。 「咲さん、嫌でした?」  座ろうとしない私を見て、幸知は不安そうな顔で小さくそう呟く。 (いつも思うんだけど、幸知君ずるくないか? そういう顔したら許されると思ってるよね? 悔しいけど、許しちゃうんだけどさ!) 「い、嫌じゃんないよ。ちょっとびっくりして……」  そう言って、私は緊張しながら幸知の隣に腰掛ける。どうしたって、半身が幸知にくっついてしまう。 「すっごい、座り心地良いですよ。暗くなったら、これ枕にして横になりましょう」  幸知は、楽しそうにクッションをポフポフと叩く。触り心地を確かめているみたいだ。私は、下手に動くこともできずに頭上を見上げる。  確かに、この座り心地最高なソファーに横になったら気持ちいいだろう。だけど、私の胸はさっきからバクバクと煩くそれどころではない。  でも、この動揺を悟られたくなくてひたすら平常心と心の中で呟く。  そんな気も知らない幸知は、私の膝の上に自分が着ていた上着を掛けてくれた。 「ありがとう」 「いえ、咲さん今日スカートだから。気になるかなって」  ゆっくり、幸知の方に顔を向けると爽やかな笑顔がそこにはあった。こんなに近くで、私だけに向けられた笑顔。  嬉しいけれど、ほんのちょっとだけ寂しい。この笑顔を、独り占めする訳にはいかないから……。
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