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二十九話 デート③
プラネタリウムを見終わった後は、みなとみらいに移動して夕飯を食べることにした。私はさっき見た星空の余韻に浸り、きっと足取りがおぼつかなかったのだと思う。
「咲さん、なんかフラフラしてますよ」
幸知は、心配げに私の手を取った。私の頭の中は、キラキラ輝く星たちが一杯で幸知に声を掛けられたのに反応が遅れてしまう。
「ごめん、ちょっとさっきの映像に心を持っていかれたっぽい」
自分がおかしなことを言っている自覚はあるのだけど、気持ちが現実に戻ってこなかったのだから仕方ない。
私は、かなり創作物に心を影響されやすい。映画やドラマ、小説や漫画など影響力の強い作品を見るとその世界観に引っ張られてしまい、どっぷりつかってしまうのだ。
だから、怖い作品などは見られないという弱点が……。
「咲さんって、純粋なんですね」
幸知が、私を見て優しく笑う。言われた私は、自分に問いかける。純粋……。そんなこと言われたのは初めてだ。
大概、友達には単純だとか影響されすぎだとか馬鹿にされるから。
「そんな風に言われたの初めて。ただ、単純なだけだよ」
私は、会話をすることで段々と現実に戻りつつあった。
「そんなことないですよ。感受性豊かって言うんですよ。全部が綺麗でしたもんねー。空間も、映像も、ストーリも、音楽も。星空の中にいるみたいでした」
「そうなの。凄く綺麗で、こんな世界があるんだって思ったら感動しちゃって。いつか、肉眼で光り輝く星空を見てみたいなー」
声に出した言葉の続きは、胸に秘める。できれば幸知と見たい……。それを叶えるのは難しいから……。
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