三十一話 それぞれの報告

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三十一話 それぞれの報告

 幸知とお別れをした後、十二月だったこともあってあっという間に時間は過ぎていった。いつもみたいに、無心で仕事に打ち込んでいたら元気のない私を気遣って、隣の鈴木さんはゴディバのチョコをプレゼントしてくれた。 「高級にすればいいって問題じゃないです」  私は、ちょっとむくれて鈴木さんに八つ当たりしてしまう。だけど、口に入れたゴディバのチョコは、甘くて上品で幸せにしてくれる味だった。  ちょっと涙目になりながら、小さな声で「鈴木さん、ありがとう」と呟くと彼は笑って許してくれた。 「藤堂が元気じゃないと、仕事捗らないからな」  私の背中をバシバシ叩いて、いつものように軽口を叩く。そんな鈴木さんに救われて、私はどんどん彼に頭が上がらなくなっていた。  何かお礼をしなきゃと呑気に考えていたら、カレンダーは新しい物に変わり新しい年が始まってしまった。  新しい年になってからも、私は幸知のことを引きづっていた。自分が幸知をふっておいて、落ち込んでいるのも変な話なのだが……。  自分の気持ちの収まりどころが見つからずに、ずっと悶々とした日々を過ごしていた。多分、傷つけられた訳じゃなくて、私が幸知を傷つけたからいつまでも胸のつかえが取れなかったのだろう。  そんな時に、七菜香から三人で会わないかと連絡があった。そろそろ、自分の中に溜め込むのも限界を感じていた為、丁度いいと誘いに乗った。  その日は珍しく、七菜香の家の近くにあるファミレスでの待ち合わせだった。三人が揃い年始の挨拶をすませて一息ついたとき、私と七菜香の声が被ったのだ。 「「話したいことがあるの!!」」  私と七菜香は、顔を見合わせる。 「七菜香の話っていい話?」  私は、七菜香よりも先に尋ねた。いい話の後に言うのは、気まずかったから。 「どちらかと言うと、多分……」  いつもの七菜香と違い、戸惑いを見せるようなそんな表情だった。 「そしたら悪いんだけど……。私の話から先でいい?」  私は、七菜香と目を合わせてそう言った。七菜香は、何も言わずにコクリと頷いてくれた。だから私は、小さく深呼吸すると途切れさせずに一気に話す。 「私ね、幸知くんに告白されたの。でも、お断りした。以上」  二人は、驚いて「「えぇぇぇぇぇぇぇぇー」」と大きな奇声を上げた。 「静かに!!」  私は、右手の人差し指を唇に当てて静かにするように訴える。二人とも、慌てて自分の口を手で塞いでいた。
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