三十一話 それぞれの報告

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「――あのさ!! 私も、報告があります! 実は……子供ができました。だから結婚します!!」  今まで静かに話を聞いていた七菜香が、突然宣言したかと思ったら爆弾発言をする。今度は私たちが「「えぇぇぇぇぇぇぇー」」と大声を上げる番だった。 「静かに!!」  私は、自分の口を手で塞いで周りに視線を巡らした。ファミレスと言えど煩くし過ぎたせいか、近くに座るお客さんたちが迷惑そうに私たちの席を見ている。 「すみません」と私たち三人は、頭を下げた。  三人、顔を向き合わせてさっきの話の続きを始める。 「あの……、父親は湊さんでいいんだよね……?」  私は、恐る恐る小さな声で聞いた。 「も、もちろんだよ! それは、間違いない。病院言ったら、妊娠二か月だった」  七菜香は、自分のお腹に手を当ててとても愛おしそうな顔をした。彼女のそんな顔を見るのは初めてで、衝撃的だった。 「結婚ってことは、湊さんも喜んでくれたんだ?」  蘭も、恐る恐る聞く。 「うん。私も突然のことでパニくっちゃって……。生理不順なところあるから気にしてなかったんだけど……余りに遅いなって思って検査してみたら陽性で。すぐに和樹に連絡したら駆けつけてくれて、結婚しようって」  七菜香は、その時のことを思い出したのかちょっと目が潤んでいる。私も七菜香の気持ちになって考えたら、涙が出そうになった。 「そっか。良かったね。おめでとう」  私は、心からその言葉を言った。 「七菜香がママかー。信じられないね」  蘭が、冗談ぽく笑う。 「そうなの! 私、結婚とかできたらいいなとは思ってたけど、こんなに突然でどうしたらいいかわからなくて……。子供もね、妊娠とか出産とか全然わからないの。産婦人科って初めて行ったんだけど、初診料が超高いの! 手持ちのお金たまたまあったから良かったけど……。それにね、母子手帳って産婦人科でもらうんじゃないんだよ? 市役所にわざわざ行くんだよ。二人とも知ってた?」  七菜香が、結婚や出産についての不安を口にする。心の準備もなく決まったことに、戸惑っている。 「いや、知らなかった。産婦人科って何もなければ行かないからね……」  蘭が、へーと知らない知識に感心している。 「もう私、訳が分からなくて……。こんなのが、ママになって大丈夫かな……」  七菜香が珍しく自信を無くしている。私は、そんな七菜香を見て何だかおかしくなった。 「なんか面白いね」  私は、ポツリと呟く。 「「何が?」」  七菜香はちょっと怒ったのかムッとした顔しているし、蘭は本当に意味がわからないそんな顔だった。 「何かさ、結婚願望が強い私は結婚できない人を好きになって。結婚願望が全くない蘭は、結婚を申込まれることに悩むことがあって。まだ結婚するつもりはなかった七菜香には、結婚と妊娠が同時に舞い込んできて。ものの見事に、人生って思った通りに運ばないなーって。凄いよね」  口に出して言葉にしたら、自分から笑いが込み上げてくる。同じテーマで悩む三人なのに、悩み方が三者三様なのだ。私が幸知に言ったように、人生って上手くいかないものなんだ。 「確かに……。なんか悩んでるのが馬鹿らしくなってくる。なんで、うまいこと嵌ってくれないのかね……」  蘭が、諦めたような口調で話す。 「結局、全部仕方ないってこと?」  七菜香は、大雑把に話をまとめる 「簡単に言うとそうなるよね」  私は、笑ってそう返事をした。 「大丈夫だよ。七菜香、案外いいママになるよ」 「そうかな……」  蘭が、七菜香をそう励ますと彼女は嬉しそうにお腹に視線を移した。そんな幸せそうな七菜香を見て、私もいつまでもこのままじゃいけないなって元気をもらえた。
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