一話 雨の中の出会い

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一話 雨の中の出会い

 バッシャン  バランスを崩し海面に叩き付けられた私は、海から顔を出すと空を見た。これで何度目の失敗だろう。海に投げ出された私は、ライフジャケットのお陰で沈むことなくプカプカ浮いている。  空には、雲一つない綺麗な青が見渡す限り広がっていた。海の青さと空の青さに挟まれて自分のちっぽけさを思い知る。 「あーくやしいー」  海の上で一人叫ぶ。さっきまで私を引っ張っていた小型の船は、私が体勢を崩してハンドルを離したのでゆっくりとこちらに戻ってきている。  今私は、ウェイクボードの真っ最中。  今日、初めて挑戦したのだが全然立てない。ボードの上に立てたと思ったらすぐにバランスを崩して撃沈し、何度もそれを繰り返している。  ちょっとだけでいいから、華麗に海の上を滑ってみたい。だけど、全然できなくて自分の運動神経のなさを呪う。 「咲ちゃーん、どうするー? もう一回やるー?」  船の上から、私に向かって叫んでくれている。私は、プカプカ海に浮かびながら考える。  本当はできるまでやりたい。だけど、残念ながら私一人がずっとやるわけにはいかない。ボート一台につき、一人ずつしかやれないスポーツなのでかなりの贅沢なのだ。  他のメンバーにも譲ってあげなければと、私は仕方なく諦めることにした。 「上がりまーす」  私は、大きな声で船に向かって手を挙げた。
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