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「ハルー!早速ナンパしてんなよ!」
後ろからわたしたちの様子を見ていたらしい村上君が、教室中に聞こえる声で言った。
だから驚いて振り返ると、悠子までイタズラな笑みを浮かべてそこに居た。
悠子と村上君カップルも同じクラスになれたのは嬉しいけど、なんていうか村上君ってノリが明るい。すごくとっても明るい。
今だって、村上君の一声でクラス中の視線がわたしと青山君に注がれている。
きっと青山君だって迷惑なんじゃないか……そう思って見た彼の横顔は、ひどく甘い色に染められているようだった。それからその唇が動いて、他愛もない冗談を口にする。
「これから口説くんだから、邪魔しないで」
その表情に、その声色に、不覚にも心臓が音を立ててしまった。
教室のざわめきが、それを隠すように大きくなる。
「ちょっと、うちの緑まで巻き込まないでくれる」
「いって、彼氏殴るか?」
「緑が困ってるでしょう?青山君も、冗談でその子揶揄うのやめてくれる」
悠子の言葉に、青山君が声を出して笑う。
「わかったから、松本さんもたまにはそいつに優しくしてあげてよ」
「そんなことしたら調子に乗るのよ、この男は」
「ひでー、俺カレシだろ?」
村上君と悠子のやりとりに、教室が笑いで溢れる。
わたしと青山君への関心も、気づけばその笑いの中に消えていた。
だから小声で目の前のクラスメイトに話しかけた。
「村上君と青山君って仲良いんだね」
「中学からの腐れ縁だよ」
「そうなの?」
「そう。あいつさ、一年の時に彼女出来たって大騒ぎして、校内で松本さん見かける度に見ろ見ろ煩くて。それで見るとだいたい一ノ瀬さんも一緒に居たから、俺らの中では一ノ瀬さんも有名人だったよ」
「え、わたしも見られてたの!?」
悠子と付き合えて喜ぶ村上君を想像したら幸せな気持ちになるけれど、まさか知らないところで自分まで注目されていた事実に、恥ずかしくて両手で頬を覆った。
「大丈夫。みんな一ノ瀬さんのことも可愛いって言ってたよ」
それはきっと、悠子と美紀のことだよ。
わたしたちはだいたい3人で行動しているけれど、美人で可愛くてモテる二人に比べて自分だけ地味なことはわたしが一番知っている。
「そういうの、お世辞って言うんだよ」
「……少なくとも、俺はお世辞じゃないけどね」
「え、」
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